8月30日、百条委員会は斎藤知事に対して、いよいよ証人尋問が行われました。
しかし斎藤知事は委員の厳しい質問に対して「記憶にありません」を連発し、のらりくらり同じ返答をするばかりでした。
20m歩かされて職員を叱責したことや、エレベーターのボタンを押さなかった職員に激怒したことは認めるも「当時の判断は適切だった」とパワハラを認めることもありませんでした。
それどころか亡くなった東播磨県民局長への懲戒処分を「誹謗中傷が多く適切だった」や「裁判になっても対応できる」など、遺族の感情を逆なでするようなその発言は、一部の識者からは「開き直っている」などと指摘されました。奥谷謙一委員長(自民党)も尋問後の会見で
「説明責任が果たされたとは考えられない」
と発言するなど進展がみられない証人尋問となりました。
しかし、斎藤知事のこれらの対応は「百条委員会はやっても意味がない」とわかった上での対応と思われます。
本記事では「百条委員会をやっても意味がない」理由について解説していきます。
百条委員会の影響力
百条委員会は自治体で不祥事や疑惑が発生した場合に、地方自治法100条にもとづき地方議会が設置する「調査委員」のことです。
この百条委員会は、証言者が事実解明を妨げるような虚偽の発言をした場合は、刑事罰を科すことができる強力な権限を持っています。
それがゆえ、「伝家の宝刀」などと呼ばれることもあり、過去には首長が辞職に追い込まれた例もあります。
具体的な例として次のような事例があります。
年 | 場所 | 役職 | 調査内容 | 経過 |
---|---|---|---|---|
2005年 | 長野県 | 知事 | 田中康夫知事の後援会元幹部の働きかけ問題など | 件の下水道業務の受注などで元幹部側に「利益を導いた」と認定。 田中氏を偽証などの疑いで告発。不起訴に |
2014年 | 沖縄県 | 知事 | 仲井眞弘多による名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認の経緯 | 是非をめぐり与野党会派の意見が割れ、報告書の両論併記 |
2019年 | 奈良県宇陀市 | 市長 | 指定管理者をめぐる専決処分 | 2度の不信任決議で失職 |
同年 | 堺市 | 市長 | 選挙運動費用の収支報告書などに記載漏れ | 百条委員会前に辞職 |
2020年 | 池田市 | 市長 | 庁舎ないに家庭用サウナ持ち込み。 | 辞職求める調査報告書を受け、辞意表明 |
以上のことから、百条委員会は「調査委員」として強い権限をもとに調査、尋問するため、時の首長さえ“辞職に追い込む”ほど影響力があることがわかります。
では8月30日の斎藤知事の証人尋問はどうだったのでしょうか?見ていきましょう。
8月30日の証人尋問(斎藤知事)
8月30日に行われた斎藤知事に対する質疑と、それに対する返答をいくつかご紹介します。
以上、一例をご紹介させて頂きました。
斎藤知事は追求される側の立場のため、今後も百条委員会で追及され続けることを考えた場合、非を認め謝罪をした方が本人も楽なのでは?と考えてしまいますが…
しかし斎藤知事は「言動は認めるが非は認めない」というスタンスを貫いており、これは今後、「逃げ切れる勝算」がなければなかなかできることではありません。
では斎藤知事に「逃げ切れる勝算」はあるのでしょうか?
斎藤知事が考えているであろう勝算が1つあります。
それは「不信任決議案」の決議による「議会の解散」です。
不信任決議案
9月2日の産経新聞報道によると、立憲民主党らで作る「ひょうご県民連合」は斎藤知事への不信任決議案を提出する方針を固めたと報道されました。
可決には議会の4分の3以上の賛成が必要でハードルが高く、同様の動きがある各会派の対応が注目されています。
この不信任決議案が提出される可能性があることは以前から報道されており、斎藤知事はこの不信任決議案の決議がなされるまで疑惑を否定し続ける戦略をとっていると推測できます。
くわしく解説していきます。
決議されると…
議会で不信任決議案が賛成多数で決議されると斎藤知事は次の2つ選択を迫られます。
- 辞職(失職)
- 議会の解散
辞職(失職)
辞職しない場合は、首長は不信任決議の通知を受けた日から10日が経過した時点で失職します。(地方自治法第178条第2項)
議会の解散
不信任決議を受けた首長は10日以内に議会を解散させることができます。(地方自治法第178条第1項後段)
斎藤知事は議会で不信任決議案が決議された場合、この「議会の解散」を選択すると思われます。
議会の解散
斎藤知事が議会を解散した場合、とうぜん百条委員会も解散となり審議は終了します。
議会が解散されたあとは、新たに県議会議員選挙が行われます。
斎藤知事が失職するには、選挙後に初めて招集された議会で再び不信任決議案を提出し、出席議員の過半数の賛成によって成立させる必要があります。(地方自治法第178条第2項・第3項)
よって、場合によっては2回目の不信任決議案が成立しない可能性もあり、今行っている百条委員会の審議の意味がなくなる可能性があるのです。
また、再度百条委員会を設置したところで、斎藤知事の任期である来年7月までに意見をまとめる事ができない可能性もあり、そうなれば斎藤知事は退職金を取得し辞職することができます。
斎藤知事はこれらの事情を考慮し、「言動は認めるが非は認めない」戦略で時間が過ぎるのを待っていると考察しました。
場合によっては辞職(失職)後の出直し選挙も視野に入れているかもしれません。
まとめ
今回はあくまでも仮説ではありますが、斎藤知事の視点に立って記事を作成しました。
9月6日に斎藤知事の2回目の証人尋問がありましたが、斎藤知事と片山元副知事の証言が食い違う部分がありました。
今後の展開によっては斎藤知事が全面的に悪いわけではないと結論が出る可能性もあると感じています。
ここ数日百条委員会での証言は新しいものもあり、今後は急展開をみせるかもしれません。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
斎藤知事:当時は車の進入禁止エリアだと認識しておらず、当時の判断としては適切だったと思っている。
斎藤知事:処分は適切だったと思う。事実ではないことが多く含まれ、ひぼう中傷性の高い文書だと県として認識したので、調査をして処分した。
斎藤知事:厳しい上司だと思われていると思う。仕事は厳しくするというのが私のこれまでのスタイル。
斎藤知事:記憶にない。なんらかの指摘をしたとしても、いろいろなレクを受けているので、1つひとつ覚えていないこともある。