【IPO抽選 公募割れ株の特徴】見分ける9つのポイント~SBI依存から抜け出すために~
IPO抽選は利益率がとても高い投資の1つです。当選すれば、初値売りした場合勝率は平均70~90%と言われています。しかし逆を言えば敗率10~30%という事にもなります。
敗因の理由は初値が公募価格を下回る為です。よって、初値が公募価格を下回る銘柄がある程度わかればその銘柄のIPO株を買わずに済むので敗率を下げる事ができます。
1.上場市場
日本には4つの証券取引所がありますが、IPOの主戦場となるのは東京証券取引所です。
東京証券取引所には企業の規模に応じて「プレミアム」「スタンダード」「グロース」と3つの市場があります。この中で最も公募割れ率が高いのがグロース市場です。
この市場は「成長企業向け」の市場のため、上場条件が甘く、比較的リスクをとった企業が多いため公募割れする可能性が高いといえます。
2023年の東京証券取引所の各市場における公募割れ数と、その確率は次の表の通りです。
市場 | 上場数 | 公募割れ数 | 公募割れ率(%) |
---|---|---|---|
プレミアム | 23社 | 2社 | 8.7 |
スタンダード | 66社 | 10社 | 15.2 |
グロース | 7社 | 4社 | 57.1 |
しかし、グロース市場は「成長企業向け」という事もあり、人気銘柄は初値が大きく跳ね上がるのもグロース市場の特徴です。
そのため公募割れ率が高いからと言って「グロース市場」を避けるのは得策ではありません。
2.創業からの年数
創業から数年でIPOまで漕ぎつけた企業はスピード感と勢いを感じさせる為、IPOでは人気化しやすく初値も高騰しがちです。
逆に創業から何十年も経つ老舗企業のIPOだと、上場後の成長余地が少ないと判断できるため投資家の興味が薄れてしまいます。
公募価格を上回る企業の目安としては、創業から20年以内が理想です。10年以内であれば公募割れの可能性はさらに低くなるでしょう。
3.公募株数と売出株数の割合
IPOで市場に売り出される株は「公募株」と「売出株(オーバーアロットメント含む)」の2つに分けられます。企業は上場時、これら2つを事情に合わせてそれぞれの割合で売り出します。公募株と売出株の違いは次の通りです。
- 公募株とは:新たに発行し売り出す株
- 売出株とは:現在の株主(経営者等)が売り出す株
そしてそれぞれ資金を得る者は次の通りです。
- 公募株:企業
- 売出株:株主(経営者等)
以上の事から、「公募株は企業の成長に貢献する」「売出株は企業の成長に貢献しない」となるので、企業に資金が入らない売出株の比率が高いと初値がなかなかのびないケースが多くなります。
何%の割合なら大丈夫という基準はありませんが、売出株が100%という銘柄もあるので、そういった銘柄は投資家から嫌煙されるので注意が必要です。
4.過去の収益
当然ではありますが、上場までに増収増益している企業は人気化しやすいので公募価格を下回る可能性は低くなります。
ただグロース市場の場合ベンチャー企業などの新興企業のIPOが多い為、営業利益や純利益が赤字の場合でも売り上げが伸びていれば期待値も高くなり、初値が大きく伸びる可能性があります。
逆に利益を出していても売り上げが頭打ちの企業は公募割れする可能性があるので注意が必要です。
5.公開株数
IPOで公開する株数を「公開株数」と言いますが、この数が多いと需要と供給の関係から初値が公募価格を下回る可能性が高くなります。
個人的な感覚としてグロース市場で上場の場合、公募割れ企業の多くが50万株を超えている場合が多いので意識してみて下さい。
6.資金吸収額
- 資金吸収額とは
(公募株数+売出株数)×公開価格※
(※公開価格または公募価格)
資金吸収額が多いと、初値が上がるのにそれだけ多くの買いが集まる必要があります。しかし需要と供給の関係で思うように買いが集まらない可能性も高くなります。
個人的な目安ですが、グロース市場の場合資金吸収額が30億円以上の場合は注意しましょう。
7.ロックアップ
IPO株式を取得している既存株主(経営者、従業員、ベンチャーキャピタル(出資会社))など一部の関係者に対して適用されるのが「ロックアップ」です。
ロックアップとは、IPOに参加した既存株主が、公開後一定期間内(通常は数十日から1年程度)にその取得した株式を売却することを制限する事を指します。これは、新たに上場した企業の株価が市場で価値が安定せず、急激な価格変動や売買の過度な影響を防ぐために導入されるものです。
多くの場合ほとんどの既存株主にロックアップがかかっていますが、時折ベンチャーキャピタルなど持ち株比率が高い既存株主にロックアップがかかっていない場合があります。
この場合ベンチャーキャピタルが株を売却し上値が重くなると投資家に判断され、初値が思うように伸びず公募割れする可能性があります。
8.同日の上場数
IPOは年間100社前後の企業が上場します。そして上場する月はある程度かたよっているので、結構な確率で同日に2,3社上場する事があります。
同日に複数上場する場合、買いが分散され資金が集まりにくく公募割れする可能性が高まります。
9.業種
IPOは業種により公募割れ率が変わってきます。人気化しやすくよく伸びるのは「IT、AI、DX」系です。比較的安定して伸びるのは「不動産」「情報、通信」「サービス業」といった所でしょう。
逆に伸びにくいのは「人材」系や「製造」「機械」「建設」といった分野です。
比較
参考までに過去のIPO企業で、初値が上昇した銘柄と公募割れした銘柄のポイントを比較して見てみましょう。
88円公募割れ(-7.9%) | 133円公募割れ(-7.5%) | 10680円上昇(136.8%) | |
---|---|---|---|
【企業名】 | JRC[ジェイアールシー](6224) | GENDA[ジェンダ](9166) | ジーデップ・アドバンス(5885) |
上場市場 | 東証グロース | 東証グロース | 東証スタンダード |
創業からの年数 | 34年目 | 6年目 | 8年目 |
公募株数/売出株数 | 0.7対99.3 | 24.6対75.4 | 26対74 |
売上/純利益(前年比) | +10%/+35% | +17.3%/+22% | +2%/+17% |
公開株数 | 50,000株 | 2,200,000株 | 120,000株 |
資金吸収額 | 71.3億円 | 155.9億円 | 19.2億円 |
ロックアップ | 主要株主ロックアップ | 主要株主ロックアップ | 主要株主ロックアップ |
同日の上場数 | 1社 | 2社 | 3社 |
業種 | 製造、販売 | アミューズメント施設の運営 | AI関連 |
上の比較表で、上昇した「ジーデップ・アドバンス」の大きな上昇理由は次の4つです。
- AI関連
- 少な目の公募売出数
- 絞れた資金吸収額
- 創業8年目
以上4つが大きな上昇につながった理由です。特にAI関連が投資家の期待値を大きく上昇させたと思われます。
続いて公募割れした2社の公募割れ理由を見てみましょう。
以上4つが各社の公募割れ理由です。ここまで見てくるとおおよその目安はなんとなくわかってきたのではないでしょうか?
注目する点は業績がいいからといって初値が上昇するわけではないという事です。
まとめ
9つのポイントを挙げましたが、全て該当する、もしくは全て該当しない銘柄はほとんどありません。公募割れ企業を見抜くにはこれらを総合的に見て判断します。1つ1つ細かい基準はないので、IPOの経験を積み重ね、予測の精度を向上させていきましょう。
「銘柄比較表」の公募割れ企業の公募割れ金額に注目して下さい。それほど大きな金額でないことにお気づきでしょうか?
これは証券会社がIPO企業の初値が公募割れしそうな局面で、株価安定の為に行う取引「シンジケートカバー取引」というものを行い下落を食い止める為です(別名:誠意買い)。つまり、IPOで公募割れしたとしても、多くの場合損失は限定的という事がわかると思います。
なので公募割れを過剰に恐れて利益を逃さないようにしましょう。
今回ご紹介した9つのポイントは、あくまでも企業が上場して初値がついたタイミングで株を売り利益を上げる「初値売り」が前提のポイントです。
そもそも初値売りは勝率70%~90%なのでIPOに挑戦する方は恐れすぎず「実戦あるのみ」でどんどんチャレンジしてもらいたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
見分け方のポイントは9つあります。初値が公募価格を下回る銘柄の見分け方は、これらのポイントを総合的に見て判断します。
1つずつ解説していきましょう。