ビッグモーターを引き継ぐ「WECARS(ウィーカーズ)」は上場するのか?

ビッグモーターからウィーカーズへ

一連の騒動を起こしたビッグモーター(以下:BM)は5月1日午前、事業を引き継ぐ伊藤忠商事が記者会見を開き、1日付けで新会社「WECARS(ウィーカーズ)」を設立したと発表しました。

多くの投資家が今回の一件に注目しており、有望株の発掘、選択をサポートするサイト「株探(Kabutan)」では、今回のニュースと伊藤忠商事<8001>のチャートグラフを市場ニュースとして発信しました。

今後さらに気になるのが「WECARS」の上場です。

この記事ではWECARSの上場の可能性について検証していきます。

ビッグモーターを引き継ぐ「WECARS(ウィーカーズ)」は上場するのか?

WECARSの上場は可能性として十分ありえます。

上場するに当たって、重要な要点は以下の3つです。

1.旧経営陣の進退及び持ち株比率

気になる創業家や旧経営陣は資本関係を持たず、経営から完全に手を引くとの事でした。以下の表が刷新された新経営陣です。

新役割氏名常勤/非常勤備考
代表取締役 社長CEO田中 慎二郎常勤元 伊藤忠商事 執行役員
取締役 副社長COO山内 務常勤伊藤忠商事 執行役員
取締役 CFO大串 啓介常勤㈱ジェイ・ウィル・アセットマネジメント
取締役石兼 淳非常勤㈱ジェイ・ウィル・アセットマネジメント
取締役矢野 孝明非常勤㈱ジェイ・ウィル・アセットマネジメント
取締役佐々木 弘非常勤㈱ジェイ・ウィル・アセットマネジメント
取締役伊藤 明子非常勤伊藤忠商事 社外取締役、元 消費者庁長官
監査役山上 秀明非常勤元 最高検察庁次長検事
監査役矢作 達也非常勤弁護士
出典:伊藤忠エネクス株式会社

上場は決議権を分散させる行為がともなうため、一族経営企業は上場を嫌煙しがちです。しかし今回投資ファンドの「ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)」が創業家側から100%の株式を取得したと報道がありました。

よって、現段階での株主はジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)が筆頭株主となります。

2.投資ファンド「ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)」の関与

ジェイ・ウィル・パートナーズ(以下:JWP)は一般的には投資ファンドと言われていますが、企業の新規上場や買収に関わる投資ファンドには「VCファンド(ベンチャーキャピタル)」と「PEファンド(プライベートエクイティ)」の2種類があります。

VCファンドIPO(新規上場)企業などに資金を提供し上場を支援する投資ファンドのため、一定の投資リスクを許容した投資スタイルの投資ファンドです。

一方PEファンドは、ある程度成熟した企業の経営権を銀行から調達した巨額の資本で買収し、強い意志を持って買収企業を成長させる投資ファンドです。JWPはこの「PEファンド」に該当します。

JWPは今回の株式買収で負債引き受け分も含めて買収総額は約600億円との報道がありますが、多額の債務を返済し利益を確保するため、JWPはWECARSの成長後株式の売却(譲渡)を行います。

報道によると、議決権ベースの株式保有比率は現在、JWPが95%、伊藤忠側が5%ですが、「2~3年後をめどに伊藤忠が100%子会社化を目指す」としています。

これはJWPが出資した約600億円を、伊藤忠側が負担する事を意味しています。現在WECARSの売り上げはBM時代の4割程度しかなく、WECARSの運営だけで元がとれるか疑わしい側面もあります。

3.資本の回収

上記で述べた通り、伊藤忠側は約600億円以上を確保する必要があるため、当然WECARSの経営再建を目指す事になりますが、自動車離れや少子高齢化が進む日本で、わずか2~3年でWECARSの経営再建だけで600億の負債を返済できるほどの利益がでるか疑問です。

もちろん伊藤忠側が新たな借り入れや、内部留保を活用してJWPへの支払いに充てる可能性もありますが、今後WECARSとしての社債を発行しやすくするためにも、上場は視野に入っていると考えられます。

よって、資金確保のためWECARSはこの数年以内にIPO(新規上場)を行う可能性は十分ありえます。

まとめ

いろいろ問題のあったビッグモーター(BM)ですが、中古車販売大手として2022年度の売上高は推定5800億円で、国内中古車販売業界でトップという輝かしい実績があります。

一部の幹部や社員による目立った行いで急転落してしまいましたが、約250の店舗と約4200人の従業員は全て新会社が引き継ぐとしており、成長の潜在能力は依然存在すると考えられます。

今後の経営再建によっては大きく成長する可能性もあり、仮にIPO(新規上場)が決まった場合は投資家の注目を集める事になるでしょう。

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