長年教育現場とともに歩んできた日本のPTAですが、ここ最近にきてそのあり方が問われています。
ひと昔前であれば、当たり前のように平日の昼間に集まっていたPTA。しかし共働き世帯の増加もあり、夫婦ともに平日は忙しく働いている家庭が多く、PTAが子供を持つ親の大きな負担となっています。
そんな中、今注目を集めているのが「PTA代行サービス(業者)」です。
ここ数年新星のように現れたPTA代行サービス(業者)は保護者の負担軽減に貢献している一方、こういった業者を利用することにモヤモヤを抱えている保護者も一定数いるようです。
そんな代行サービスはPTAの救世主となるのか?また、これらのサービスは個人でも利用できるのか?
今回はそんな「PTA代行サービス(業者)」(以下:代行サービス)を特集します。
PTAが抱える課題
時代の流れとともに人々のライフスタイルや価値観は変わります。PTAの活動内容も、徐々に違和感を感じるものが多くなったことで度々問題化するようになりました。
問題点
具体的には次のようなものがあります。(一般例)
- 半強制で退会の自由がない
- 会費が強制的に徴収される
- 個人情報の保護がゆるい
- 活動を強要される
非効率性
また、2022年に「LINE WORKS」を提供しているワークスモバイルジャパン(株)が、PTA役員経験者435人を対象に「PTA活動に関する意識調査」を実施しました。
「所属するPTA組織の運営において非効率だと思うこと」との質問内容に以下の結果が得られています。
以上のことからPTAが抱える「問題点」と「非効率性」が見えてきました。
これらを解決、軽減する需要が時代とともに増加したことを背景に、代行サービスが広まりつつあると言えます。
【PTA代行サービス(業者)】とは?
PTA代行サービス(業者)とは、「PTAが行っている業務の代行」や、「学校行事に関する支援」をアウトソーシングしているサービス会社です。
現在PTAに関する代行業務を専門で行っている企業(部門)は以下の4社があります。(2024年6月現在)
PTA’S(ピータス)
PTA’S(ピータス)は、PTA業務のアウトソース先を、簡単且つ的確・適切に検索することができる、マッチングサイトです。
更に、PTAならではの疑問や困りごと・課題などを、PTA’S(ピータス)にしかできない切り口で解決に導く、日本初のPTA専用支援サービスです。
近畿日本ツーリスト
1965年の創業以来、修学旅行を中心に培った運営スキルと事務スキルを提供しています。
その他にもイベントノウハウを活かし、行事のライブ配信や、行事のコーディネートなど新しい試みも行っています。グループ会社や取引先企業など、広大なネットワークを活かしさまざまなPTA業務に対応しています。
ベル・ヴォア(関東)
もともとはウエディング企業でしたが、現在はすそ野を広げてPTA代行業務も行っています。
業務内容は「印刷、デザイン」や「WEB制作」から「記念品を制作」まで多岐にわたります。
所在地は千葉県船橋市で、事業は主に東京都と千葉県で行われています。
MJT(関西)
所在地は兵庫県加西市で、主に関西を中心に事業を行っています。
運動会や文化祭・入学式・卒業式・謝恩会など各校で開催される学校行事や、PTA主催の様々なイベントを企画から運営準備・運営・片付けまで、トータルでサポートしています。
PTAが発行する広報誌やチラシの構成・デザイン・印刷も行っており、人材派遣とあわせてワンストップで業務を委託できるのが特徴です。
その他
その他にもコミュニケーションツールとしての活用を得意とする「ラインワークス」など、PTA専門というわけでなくても特定のジャンルにおいてPTA業務を支援する企業も多く存在します。
個人で利用できるのか?
PTAでの活動は基本的には保護者(多くの場合母親)が参加しますが、行っている活動の中には「地域の見守り」や「学校行事の受付、案内」など、必ずしも保護者本人がしなくてもいい活動があります。
そんな場合、保護者個人が代行業者にアウトソーシングできるのでしょうか?
結論
結論、業務内容にもよりますが、代行サービスを個人で利用する場合は所属しているPTA組織や学校の理解があれば可能といえます。
2024年6月9日の地方紙、「神戸新聞NET」には「PTA代行サービスへの賛否両論」という記事が投稿されており、一定数の保護者は代行サービスを利用することに「違和感」を感じていることがわかりました。
もちろん理解や許可が絶対条件ではありませんが、PTA組織や学校はコミュニティーであり、個人情報が集まるところです。トラブルを避けるためにもあらかじめ理解や許可を得ておくことが望ましいといえます。
個人で利用する場合
仮に代行サービスを個人で利用する場合は「人材派遣サービス」がメインとなります。
この場合はPTAを専門にしている企業をわざわざ選ぶ必要はなく、信用や費用の面で折り合いがつけば極論「町の便利屋さん」でもいいでしょう。(ちなみに近畿日本ツーリストは個人からの依頼は受け付けていないようです。)
理想は代行サービスではなく「他の保護者に変わってもらう」事ではありますが、保護者の中には事情があり普段から保護者会などに参加できず、誰かに頼むことができない方もいるかと思います。
そういった方は早めに事情を説明し、許可や理解を得ておけば、後ろめたい思いもせず上手に代行サービスを活用できるでしょう。
代行サービスを利用するにあたっての注意点
PTA組織として、代行サービスを利用するに当たって注意点があります。
それは、その活動が本当に続ける必要があるかを依頼前に検討するということです。
ひとたび依頼をすると、その活動は続いてしまい、廃止をするきっかけを失うだけでなく経費が発生し続けます。
PTAには、なんとなく続いている活動もあるかと思いますが、今まで続いていた活動を廃止するのは難しいことかもしれません。
しかし、費用が発生する代行サービスの利用検討がきっかけとなり、廃止に向けた議論が活発化することで意見がまとまりやすくなります。
結果、不必要な活動の廃止につながり保護者の負担を軽減させるという当初の目的を達成することができる可能性があります。
まとめ
PTAは今変革の時期を迎えています。
東京や地方の政令指定都市でもPTAを解散、もしくは有志による団体へと姿を変えつつあります。
報道記事「FNNプライムオンライン(2023年3月7日)」によると、東京都立川市にある「市立柏小学校」でPTAの解散に関する保護者アンケートをとった結果、98.7%の賛成があり解散に踏み切ったと報道されていました。
また、愛知県豊田市の浄水北小学校では、会費も参加強制もない団体「PTCA(C=コミュニティー)」というボランティア団体として機能しています。
PTCAの運営資金は、児童や保護者で集めたリサイクル品の資源を売ることで得ており、市の補助金と合わせると年間20万円ほどの収入があり緑化活動までしていると言います。
これらの流れは全国的な流れになる可能性があり、今後は代行サービス以前の問題として、「PTAが本当に子供達のためになっているか?」といった議論が活発化しそうです。